日本人の性格と文化を考えると、行政機構におけるDXは無理と思われる。なぜならITは白黒がはっきりした技術だからである。最近話題になっているAIで画像や文章を扱う際には1,0に変換した膨大なデータを処理している。そこに曖昧さは微塵もない。なぜなら曖昧さも数値に変換するからである。
また、DXはフラットかつオープンな体制を必要とする。
一方、日本人は白黒をはっきりすることは得意ではない。そもそも自分の意見をストレートに表現するのは失礼だと思っている節がある。会議では序列が下の者が自分の意見を述べることすら許されない雰囲気がある。
以下は旧聞に属するが、
各省庁のDX担当組織はその多くが天下り先といわれている財団法人が担っている。例えば国交省関連では財団法人建設情報総合センター(JACIC)がある。ここでは建設事業の入札システムや技術情報の認可・更新情報等、建設事業に関するITシステムが稼働している。
人員構成は理事クラス、担当部長の殆どは官庁からの天下り組で占められ、プロパーとして働く職員は公務員レベルの待遇や給与レベルで応募してくる能力の者が多い。比較的に能力があって実務に精通しているスタッフは、ITゼネコンといわれる企業からの派遣職員である。
権力の序列は理事、部長、プロパー、派遣で、IT知識や経験値は逆順になる。上層部の人たちはほぼITスキルはなく、ただ官僚のキャリヤとしての経験しかない。そこで問題となるのはITの世界はアナザーワールド(用語、価値観、文化等が違う)なので、まず専門用語が通じないことである。まるで外国語で会話している感じで相互理解が進まず、通訳的作業が上積みされる。
キャリヤ官僚はプライドが高いので分からないという代わりに、バグのないシステムを開発して、問題が絶対に発生しないようにしろと要求してくる。ここではPDCAサイクルで徐々に改善するといった文化はない。ITの世界では初めから100%の完璧な完成という思いで、システム開発をしている技術者はほぼいない。少しぐらい問題が発生しても、すぐに修正をして完成させればよいと考えるのがITの世界なのだ。
行政のDXが進まない理由として、要件定義の作成において末端の個々のユーザーの意見を聞かないこと、ITによる作業効率や利便性の向上を図ることより、責任を取らないように絶対の安全性を優先すること、現状の作業プロセスをDX化に合わせて改善するより、現状の業務プロセスをそのままITに要求すること等があげられる。
一例をあげてみよう。
マイナンバーカードである。システム開発者は極力ユーザーの行動ステップ数を減らすように設計する。アナログにおけるステップ数より多くなれば何のためのシステム化かと問われるだけでなく、普及もしない。ところがマイナンバーカードはアナログ時代よりユーザーにとってすべての面でのステップ数が減ったわけではない。健康保険証がいい例である。紙の保険証はユーザー宅に送られてきていた(ステップ数0)。これがマイナンバーカードになると、まずマイナンバーカードの取得のために、写真を撮る、行政の窓口に行って申請する、有効期限が10年(未成年者は5年)、電子証明書は5年となっているので、そのたびに行政の窓口に行かなくてはならない。逆にステップ数が大幅に増えているのである。
もう一度、何のための誰のためのDX化を真剣に考えるべきであろう。